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会計と税務は、どこから手をつけるのか

手術室では迷わず判断できる人が、会計や税務になると途端に自信をなくすことがあります。

公開日:2024年4月30日 / お金の設計

専門外だから、止まります

対人援助や医療の現場で専門性を築いてきた方から、一貫して届く声があります。「税務のことを考えると、頭が痛くなる...」。事務的な手続きはどうすればいいのか。「節税と脱税の違いがよく分からないから、節税が怖い…」。手術室では迷いなく判断できる人でも、会計や税務となると途端に自信をなくします。全くの専門外だからです。

私自身も同じでした。「きちんとやらなければ」という思いが強すぎて税務の勉強に没頭し、会計ソフトを比較検討し、肝心の対人支援に割ける時間が減っていきました。恩師の「専門性を活かすなら、その道のプロに任せることも大切だよ」という言葉をきっかけに、長年信頼関係のある税理士の先生に相談してみることにしました。

ただし、丸投げは最適な選択ではありません。委託しても、経営に不具合が生じたときの最終的な責任は本人にかかります。小規模から始め、家庭教師の先生のようなイメージで、任せつつ自分でも理解し管理できるよう徐々に深めていく。この形なら知識が効率よく身につき、将来ご自身で全面的に運営する道も残ります。

活動形態は、収入の規模で三つに分かれます

副業として始める形は、年収300万円未満が目安で、未経験ならまずここから、という位置づけです。給与所得者の雑収入として申告し、確定申告の要否を判断し、職場の副業規定を確認し、経費を記録・保管し、源泉徴収と所得税の関係を押さえる。リスクを抑えて段階的に始めたい方、本業を大切にしながら成長を目指す方に向きます。

個人事業主として始める形は、年収300万円以上が目安です。開業届を出して所得が雑所得から事業所得に変わり、屋号を決め、青色申告を申請し、記帳を始め、個人事業税に備えます。安定した収益が見込める方、個人で柔軟に活動したい方、経費や確定申告の管理を自分でできる方に向きます。

法人として始める形は、事業収益が800万円以上、または将来の拡大性が早いと見込める場合です。法人設立の手続き、定款の作成、資本金の決定、役員構成の検討、登記申請の準備が並びます。複数の事業展開、チーム構築や雇用、大規模な資金調達、社会的信用度、事業承継を考える方に向きます。

形態は段階的に変えられます。副業から個人事業主へは、年間収入300万円超の見込み、確定申告の複雑化、事業としての体制が整ってきたとき。個人事業主から法人へは、年間収入800万円超の見込み、従業員の雇用、大型の契約や取引の増加、社会保険加入の利点が大きくなったときです。

実務は、任せるか自分でやるかで道具が変わります

考えたいのは「有限な時間と労力を、どこに使うか」です。道は二つあります。税理士に全面的に依頼する形は、安心して複雑な処理を正確に任せられ、時間を本業に集中でき、将来の事業拡大にも対応できます。かわりに毎月の顧問料、資料の準備や報告の手間、相性の合う税理士を探す労力がかかります。自力で行う形は、初期コストを抑えられ、経営感覚が身につき、自分のペースで処理でき、会計ソフト内で完結します。かわりに学習時間、ミスのリスク、確定申告時期の負担の大きさ、事業拡大時の対応の限界があります。

道具の選び方も、この選択で変わります。税理士と連携するならクラウド型で共有が容易なもの。freeeは連携機能が充実し、マネーフォワードは操作が直感的、弥生会計はかつて税理士が第一に選択した老舗、というのが記事執筆当時の記載です。最新は各社の公式の案内で確かめる形になります。見るのはデータ共有のしやすさ、税理士事務所との相性、入力のしやすさ。自力ならより詳細な機能が要ります。弥生会計は本格的な会計処理ができ、freeeは確定申告機能が充実しています。デスクトップ型は高価、クラウド型は安価。見るのは確定申告機能、自動化機能、レポート機能、サポート体制、万が一の税務調査に耐えうる証憑です。

流れは三層です。日々は収入と経費の記録、領収書の保管とデジタル化。月次は収支と帳簿の確認、依頼していれば税理士への報告。年次は確定申告の準備、決算書の作成、納税の手続き。税務の側では、確定申告の必要書類の把握と整理、経費計上の基準、節税対策の基礎、申告時期の確認。消費税では、課税事業者と免税事業者の違い、課税売上高の管理、インボイス制度への対応、計算方法を押さえます。

完璧を目指さないところから

完璧を目指すのではなく、自分に合った形から始める。私自身はまず自力で全てやってみましたが、リスク管理が得意な私たちにとって、税務調査や申告漏れはやはり気になる点でした。今は昔からお世話になっている税理士の先生に事業のこともお願いし、良好な連携のためのシステムづくりと、必要最小限のアプリの活用に落ち着いています。

申告の時期が来ても、机の上に出すのは領収書の山ではなく、自分で引いた線です。ここまでは自分でやる、ここからは先生にお願いする。誰かの正解に合わせるのではなく、自分の判断で事業の形を決めていく——その最初の一本が、この線引きです。

※本記事は情報提供を目的としており、医療行為・心理療法ではありません。個人の感想であり、効果を保証するものではありません。
道具は、決めてしまえば手から離れます。残るのは、自分の名前で何をどこまでやるか——その一本の線です。スラトレ®キャリアラボの90分の面談は、その線をご自身の言葉で引くための時間です。90分のキャリア相談を見る