豊かさを、健康の側から見ます
本当の美しさとは、なんでしょうか。この問いに置かれている答えは、「内から静かに湧き上がる自然美」というものです。まるで温泉のように、とどまることなく湧き続ける。そういう像です。
健康で豊かな心と体は、本来ヒトとしての基盤でした。基盤という言い方が使われているのは、それが目標ではなく土台だからです。豊かな健康があると、豊かな人間性が育まれていきます。
順番でいうと、健康が先で、豊かさがあとになります。逆から見ると、稼いだあとで健康を買い戻す、という順番になります。同じ材料でも、どちらの順で並べるかで、日々やることが変わってきます。
一年続けた人が語ったこと
ある受講生の方の話が紹介されています。仮にSさんとします。職場での毎日の疲労感が顔に色濃く表れ、年齢以上に疲れて見える自分に戸惑い、これが年を取るということなのかと諦めかけていた、という状態からの出発でした。
幹部としてスタッフの指導やクライアント調整を担っていましたが、実際にはトラブル対応に追われ、自分の時間も心も静かに消耗していました。始めてみると、自分の感情を言葉にすることに大きな戸惑いがあったといいます。職場では常に強いリーダーシップを求められ、弱さを見せることは許されない。そのプレッシャーが身体に染みついていたからです。
一年続けたあとの言葉が二つ残っています。「気がつくと、以前はつい声を荒げてしまう場面でも、冷静に対処できるようになっていました。なんだか不思議です」。もう一つは、「仕事中にストレスを感じても、心が乱れにくくなりました」。個人の感じ方であり、変化を保証するものではありません。
短期の強化と、続く土台は別のものです
自己成長やメンタルの一時的な強化は、実はどなたにも起こり得ます。研修を受けた直後、本を読み終えた直後、気持ちが強くなる感覚は誰にでも訪れます。
そこから先が分かれ目になります。大切にしたいのは、長期的にゆらぎにくい土台をつくるほうです。外から何かを加えるやり方ではないので、時間はかかります。その分、内側の豊かさが外見の落ち着きを支えていきます。
特定の技術や方法だけでなく、自分自身を深く見つめ直すこと。感情の解放や自己認識が少しずつ進み、心身のバランスが整いやすくなっていく。そういう歩みを丁寧に重ねる形になります。
内側から育てるほうへ
イライラしていたり心配が絶えないと、眉間にしわが寄ったり表情が固くなったりするのは自然なことです。逆に、心の内側が少し整うと、表情も自然とやわらいでいくものです。
だから、健康な豊かさは、足し算では作れません。外から加えたものは、加えた分だけ維持の手間がかかります。内から湧いているものには、その手間がかかりません。湧く場所を先に整えるほうが、結果として長く続きます。
今こそ、自分自身を見つめ直し、内側と外側の自然なバランスを育てるための一歩を踏み出す。順番を入れ替えるのは、その一歩からになります。
鏡の前で表情を作りにいく前に、その手前へ手をかけます。足したものを維持する手間が要らなくなる分、時間が空く。外側を保つために回していた力が、湧く場所を育てる側へ回ります。