気づいても、手立てが手元にないという場面
心の相談を受けている最中に、相手の体の疲れが目に入ることがあります。もっと元気になってもらえるはずだ、と思いながら、そのための具体的な方法が手元にない。この葛藤は、情熱を持って仕事をしている方ほど抱えます。
実際に聞くのは、こうした声です。心のケアを行う中で相手の身体的な不調が気になるが、ストレッチなどの具体的な対処方法がわからない。身体的なセルフケアを提案したいが、専門知識や技術に自信がない。そして、自分自身も肩こりや猫背が気になっている。三つめが入っているところが、この話の入口になります。
小さな習慣の積み重ねが、その日一日を決めます
30歳を過ぎた頃、鏡に映る自分の姿に違和感と諦めを感じていた、というところから始まっています。かつての活力は影を潜め、体は重く、心は疲れきっていた。「これが医師である自分の姿なのか」と自問する日々の中で生まれたのが、諦めないという決意でした。実際には何年間も諦めた、とも書き残されています。
そこから生まれたのが、解剖学の知識と整形外科医としての経験をもとにした、自分自身をケアする体操です。毎朝30分から40分、その日のインナーマッスルの効きを最大にしておく。デスクワークの合間には、30分おきに遠心性収縮の動きを入れる。小さな習慣の積み重ねが、人生を劇的に変える。コーヒーを入れる時間と同じくらいの長さが、その日一日を決めていきます。
専門性を超えない範囲、という線
臨床心理士や公認心理師が、リラクゼーションの一環として簡単なストレッチやセルフケア体操を伝えることは、問題ありません。それでも指導の資格が気になる方には、体操の指導者資格という選択肢があります。
PPK体操リーダーの認定は、公益財団法人ひの社会教育センターが発行しています。同センターは、日野市と公益財団法人社会教育協会が共同で運営する市民のための社会教育機関です。この認定は、専門的な資格というよりも、地域での健康づくり活動を推進するためのものと位置づけられています。線を確かめておくと、どこまで伝えてよいかで迷う時間が減ります。
自分の体から始める、という順番
相手に伝える前に、まず自分の体を整えます。肩こりが気になっているなら、その部位のセルフケアが得意になっていきます。猫背が気になっているなら、そこが出発点になります。自分で通った道は、そのまま伝えられる道になります。
順番が逆にならないこと。これが、この考え方の要です。人生は変化の連続で、その変化を恐れずに楽しむことが、成長の鍵になります。小さな一歩が、やがて大きな変化につながっていきます。
自分の肩を先に整えた人は、相手に伝えるときの言葉が短くなります。読んだ知識ではなく、通ってきた道を話しているためです。役に立つ情報を集めて渡す関わりから、自分の実感ごと渡す関わりへ。順番を守るというのは、相手より自分を優先することではなく、渡せるものを本物にすることです。