昇進が決まった週の、金曜の夜
ある方から、こんな話をうかがいました。何年も望んでいた役職が決まった週のことです。金曜の夜、家に帰って玄関で靴を脱いだところで、思っていたほど嬉しくないことに気がついた。
おめでとうと言われるたびに、ちゃんと笑えている。それなのに、胸のあたりが静かなままで動かない。座って肩の力を抜いた瞬間にいちばん強く出てきたのは、次は何を達成しなければいけないんだろう、という考えのほうだった。
手に入れたのに満たされない。この順番のことを、少し分けて見ていきます。
注ぐ水ではなく、器のほうの話
幸せを、外から注ぐ水のように考えている状態があります。成功すれば注がれる。認められれば注がれる。理想の暮らしが手に入れば注がれる。だから、注ぐものを探し続けることになります。
ところが、器のほうが少し傾いていると、どれだけ注いでも溜まりません。溜まらないので、もっと注げばいいのだと考えて、次の水を探しにいきます。手に入れたそばから次を探してしまうのは、意欲が強いからで、どこかが壊れているからではありません。よく走る人ほど、この回り方をします。
傾きは、たいてい小さなところに出ます。休みの日に予定を入れていないと落ち着かない。何もしていない時間に、うしろめたさが混じる。夜、目を閉じてから、今日やり残したことを数えはじめる。どれも一つずつなら、ただの生活です。
順番を入れ替えると、見え方が変わります
スラトレ®では、幸せはすでにそこにある状態(Be)だと考えます。幸せだから、挑戦できる。満たされているから、仕事に打ち込める。整っているから、人との間もうまくいく。Beが先で、その後にDoが続く、という順番です。
学校でも職場でも、たいていは逆の順番を教わります。目標を達成することが大事。人より上に行くことが成功。何かを成し遂げなければ意味がない。どれも間違いではないのですが、器が傾いたまま積み上げると、積むほど不安定になります。
順番を入れ替えても、やることは一つも減りません。減らないのに、同じ一日の重さが変わることがあります。
条件が揃うのを待たない
〇〇があれば幸せなのに、という考え方のままだと、幸せはいつも未来のものになります。嫌な上司がいなくなったら。給料が上がったら。目標を達成できたら。けれど、未来のことは誰にもわかりません。
スラトレ®が扱っているのは、いつか幸せになるための頑張り方ではなく、いま器がどちらへ傾いているかを自分で見られるようになることです。何かをしていないと落ち着かない状態から離れること。すでに満たされているという感覚を育てること。幸せの基準を、外ではなく自分の内側に置くこと。
いつも何かをしていないと落ち着かない。頑張っても満たされない気がする。そう感じているなら、入口はそこにあります。
予定の空いた土曜の午前に、埋めるものを探さずに済む日が来ます。何もしていない時間が、サボりではなく、器が満ちている時間として数えられる。次の条件が揃うのを待たずに、今日の自分の状態から一日を組み立てられます。