「今年こそは」の直後に、立ち上がるもの
今年こそは変わろう、今年こそは痩せる、今年こそは運動を始める。新しい年や節目を迎えると、誰もが胸に抱くこんな願いがあります。この「今年こそは」という思いは、実はとても素晴らしいものです。ただし、その貴重な思いを活かすためには、丁寧な向き合い方が必要になります。
今日から変わろう。その思いは、心の奥深くから発せられる大切なメッセージです。しかし同時に、その声を聞いた途端に襲ってくる不安や恐怖があります。それは決して押し殺すべきものではありません。
私は医師として20年以上、数多くの方の体と心に向き合ってきました。そこで気づいたのは、多くの方が「変わらなければ」という焦りから、不安や恐怖を押し殺して無理に前に進もうとされている、ということです。
押し殺して進むと、成功体験が別のものに変わります
運動を始めなければ。痛みに耐えてでも頑張らなければ。怖くても飛び込まなければ。この「〜しなければ」という強迫的な思いは、かえって心と体を縛り付けてしまいます。
不安や恐怖を押し殺して得た「成功体験」は、本当の意味での成功体験にはなりません。むしろ、その体験自体が新たな不安や恐怖の源となってしまうこともあるのです。
医療現場で出会った患者さんたち、そのご家族、さらに社会の中で出会ってきた多くの方々を見てきた中で、特に気になるのは、日本人が不安や恐怖を抱えたまま「頑張って」しまう傾向です。まるでまだ「戦時中のよう」だと感じることもあります。病院の中でも、会社の中でも、家庭の中でも、この傾向は変わりません。
心の準備を、先に置くという段取り
スタンフォード大学での研究経験を通じて、私は「心の準備」がいかに重要かを学びました。たとえば、運動を始めたいと思っているのに、自分には無理かも、周りの目が気になる、という不安が強いなら、まずはその不安の正体をノートに書き出し、一つひとつ向き合っていけばよいのです。
怪我を抱えたまま我慢して走り続けるような強行突破は、いりません。
スライブトレーニング®を開発した最大の理由は、ここにあります。まず大切なのは、不安や恐怖と向き合い、それを理解し、受け入れること。それが、本当の変化への第一歩だと考えています。ノート術を使って、その不安や恐怖を整理していく。まるで外科手術のように、的確に丁寧に、という進め方です。
不安は、守るためのシグナルです
今、心は何を恐れているのか。その不安は、どこから来ているのか。これらの問いかけに丁寧に向き合うことこそが、本当の変化への扉を開く鍵になります。不安や恐怖という感情は、実は心と体を守るための大切なシグナルなのです。
多くの方の中には、ただただ「絶対にスラトレ®を成功させたい」「根っこから変わりたい」という良いイメージしか隠れていないことがあります。とても真面目で純粋なのです。だからこそ、不安や恐怖との付き合い方を一緒に学んでいけたらと思っています。
理論的根拠のない方法に身を委ねる必要はありません。もう少しだけ、自分への優しさで包んだっていいじゃないか。これまでこんなにおひとりで頑張って来られたのだから。そう考えています。
変わろうとするたびに来る不安を、止まれの合図として読まなくてよくなります。何を守ろうとしているのかを、先に確かめられるからです。不安が消えるのを待たずに動ける。抑え込むことに向けていた注意が、進む先のほうを見はじめます。