二階の、閉めたままのドア
子どもが家を出てから、二階の部屋がひとつ空いたままになっています。掃除機だけはかけている。それ以外の用事はない。
階段を上がるたびに、閉まったドアが目に入ります。ローンは続いている。使われていない面積の分だけ、毎月払っている感じがして、みぞおちのあたりが少し重くなる。
使っていない部屋を活かせないかと考えるのは、家を大事にしているからです。ただ、活かし方には一本の線があって、そこを越えるかどうかで、手元に残る額が大きく変わります。
越えてはいけない線は、10%未満です
住宅ローンを使ったマイホームを事業に活用する場合、事業利用が10%未満であれば、住宅ローン控除と、売却時の3,000万円特別控除を維持できます。10%以上になった時点で、これらの控除を受けられなくなります。
コンセントに例えるなら、ブレーカーの容量に近いものです。少し越えただけでも、越えた瞬間に落ちます。落ちるのは今月の収入ではなく、控除という大きなほうです。少し貸すだけなら得になっても、少し貸しすぎた瞬間に逆転します。だから、絶対に越えてはいけないラインとして扱います。
計算の対象になるのは、面積と使用の頻度です。どの部屋を、どれくらいの期間、どんな目的で使うのか。この三つを先に決めてから、活用の形を選ぶ順番になります。
貸し方には、いくつかの形があります
ひとつは、Airbnbなどを使った民泊です。住宅宿泊事業法に基づく住宅宿泊事業として、保健所へ届出をすることで可能になります。年間180日未満という上限があり、旅館業法とは別の枠組みです。
民泊には2つの形態があります。家主滞在型は、自宅の一室を宿泊者に貸すhomestay型です。家主不在型は、留守中に一軒家をまるごと貸すタイプで、管理会社との提携が必要になるため費用がかさみます。空いた部屋ひとつを活かす、という出発点なら、前者のほうが線を越えにくい形になります。
もうひとつは、自習室やコワーキングスペースとしての一時使用です。この場合の収入は雑収入として申告します。ここでも条件は同じで、10%未満・不定期開催が前提です。これを超えると、住宅ローン控除と3,000万円控除の適用が外れます。
税務の扱いも整理しておきます。個人での事業利用収入は、雑所得(小さな事業所得)として申告します。自宅を法人に貸して法人が運営する場合は、個人は不動産所得、法人は事業所得として処理します。同じ部屋を貸していても、誰が運営するかで申告の区分が変わります。
売却するときに、いちばん差が出ます
住宅ローンを使って購入し、事業利用が10%未満または0%だったマイホームを売却する場合、3,000万円特別控除が適用できます。
税率は、5年以内の売却で増益分の約40%、5年以上の保有後の売却で約20%です。保有した年数だけで、残る額が変わります。
いずれも確定申告で申請しますが、申告ミスがあると控除が入金されません。金額が大きい分野なので、税理士に確認することをお勧めします。閉めたままのドアを開ける前に、線がどこにあるかを先に確かめる。順番としては、こちらが先に来ます。
使っていない部屋を見る目が変わります。持て余しているものではなく、条件を確かめれば動かせるものとして見えてきます。制度を知らないまま眠らせておく状態が、線の位置を確かめて自分で決める状態になります。家は、そのとき住まいであると同時に手持ちの札になります。