翌朝、隣の席の人はもう普通に話している
会議で強い言い方をされた翌朝のことです。同じ場にいた隣の席の方が、いつもの調子でおはようございますと言ってくる。
こちらは、昨日の言葉がまだ喉のあたりに残っています。何度も再生してしまうし、朝、起き上がるまでに少し時間がかかった。同じ場面にいたはずなのに、戻る速さがここまで違うのはなぜなのか。
同じ人に、同じことを言われて、片方だけが引きずる。この差は、打たれ強さの差として説明されがちですが、もう少し別のところに理由があります。
早い人は、手が速いのではなく、置き場が決まっている
台所を思い浮かべてみます。洗い物のあと、片づけが早い家と、そうでない家があります。差がつくのは手の速さではありません。菜箸をどこへ入れるかが決まっているかどうかです。
置き場が決まっていれば、持ったものをそこへ入れるだけで終わります。決まっていないと、持ったまま、どこへ置くかを考えることになります。持っている時間が長くなるのは、迷っている時間が長いからです。
気持ちも同じです。下がったときに何をするかが決まっていれば、決める作業が省けます。決まっていないと、すでに下がっている状態のまま、対処法を一から探すことになります。いちばん力が出ないときに、いちばん頭を使う作業が回ってくる形です。
切り替えが早く見える方は、この置き場を持っていることがあります。忘れているわけではありません。覚えたうえで、次に何をするかへ移るのが早いだけ、という場合があります。
切り替えられない側が、雑なわけではありません
戻るのに時間がかかるのは、感じたことをそのまま流さずに扱っているからです。言われた言葉を何度も再生してしまうのは、その言葉の中身をちゃんと受け取ったということでもあります。受け取らない人は、再生もしません。
だから、早く戻れる人のほうが優れている、という話にはなりません。切り替えが早すぎる人が冷たく見えることがあるのは、この裏返しです。
問題は速さそのものではなく、下がったまま止まっている時間が、生活のほうへはみ出してくるかどうかです。眠りが浅い日が続く。食事の途中で、昨日の場面が戻ってくる。肩が上がったまま一日が終わる。ここまで来ているときは、置き場が決まっていないぶんの負担が、身体の側に出ていると読めます。
置き場は、人によって違います
誰にでも同じものが合うわけではありません。眠れば戻る方もいれば、身体を動かしたほうが早い方もいます。誰かに話すことで整理がつく方もいれば、一人になる時間が要る方もいます。
うまくいっている人のやり方をそのまま真似ても、合わないことがあるのはこのためです。要るのは、自分の場合に何が効いているのかを、実際に試して確かめていく作業のほうです。
スラトレ®がしているのは、この確かめる作業を自分の手でできるようにすることです。対話ノートという書き方を身につけて、自分に合う置き場を自分で見つけられるところまで練習します。効き方には個人差があり、同じ手順が誰にでも同じように働くとは限りません。だからこそ、確かめる作業そのものを技術として扱います。
翌朝いちばんに、菜箸をどこへ入れるかが決まっているかどうか。扱っているのは、そこです。