運動器障害が指しているもの
運動器障害とは、筋肉・骨・関節・腱など、体を動かすための部位に生じる機能障害を指します。腰が痛い、肩が上がらない、膝が曲げにくいといった訴えは、この枠に入ります。
見ておきたいのは、影響の及ぶ範囲です。慢性的な痛みや動作制限は、単なる身体的な問題にとどまらず、仕事・家族生活・社会活動・睡眠・精神面にまで影響を及ぼし、生活の質を大きく低下させる要因になります。痛む場所は一か所でも、影響が出る欄は複数になる、ということです。
どれくらいの人が抱えているのか
数字の側から見ておきます。2012年の米国調査では、成人の約半数が運動器障害を抱えていると報告されています。
また2019年のデータによると、世界で約17億1,000万人が運動器障害を抱えており、障害調整生命年、いわゆるDALYの観点から全体の約17パーセントを占めるとされています。DALYは、病気や障害によって失われた生活の年数を測るための指標です。
増えている背景にある、三つの変化
運動器障害の増加は、主に三つの要因によると考えられています。
一つめは、スポーツ人口の増加です。運動やスポーツ愛好家が増えるのに伴い、特定部位を使い過ぎるオーバーユースや、誤ったフォームによる怪我が増えています。二つめは高齢化で、高齢者人口の増加により、関節炎や腱障害の発生率が上昇しています。三つめは労働環境の変化です。デスクワークや在宅勤務の増加により、姿勢の悪化や反復動作による負担が顕著になっています。
2030年までに関節炎の有病率は成人人口の約6,700万人に達するとも予測されており、社会全体での対応が求められる時代に入っています。
PM&Rが引き受けている領域
PM&Rは、Physical Medicine and Rehabilitationの略で、日本語ではリハビリテーション医学にあたります。欧米をはじめ、台湾や韓国などのアジア諸国でも発展が進んでいる分野です。
この分野が正面から扱っているものの一つに、腱障害があります。腱障害はスポーツ障害全体の約30パーセントを占め、毎年1,640万人以上が治療を求めているとされます。しかし従来の治療法では十分な改善が得られず、複数の医療機関を訪れるケースも少なくありません。PM&Rの分野では、腱障害の根治を目指した新しい治療法の研究が進んでおり、とくに細胞を活用した再生医療は注目度の高い領域として、従来型治療の限界を乗り越える可能性が期待されています。
こうした現状を踏まえると、効果的な予防策や治療法の研究が進むのを待つだけではなく、今できることに取り組む姿勢が大切です。一人ひとりが積極的に健康管理へ向き合うことが、将来の負担軽減につながると考えられます。
研究の進み具合を待たずに、今週やることを決められます。制度や分野の話と、自分の一日の話を分けて置いているためです。整うのを待つ姿勢から、整うまでのあいだを自分で埋める姿勢へ。運動器を守るというのは、その埋め方を持っているかどうかです。